変わらぬ愛なんて、あり得ない!【甘い香りに誘われてⅡ】spin off
定時まで、あと二時間。

法人営業部に戻った私は、終始俯いたまま、データ入力をして過ごした。


「お先に失礼します」

大急ぎで着替えを済ませ、通用口から外へ出た。

早く一人になりたい。


駅へ向かう足は、だんだん速くなる。


「待てって。歩くの速いな」

横に並ばれる。

「お、お疲れさまです。矢野さん」

笑顔を張り付ける。

こっち…と、建物の陰に連れて行かれる。

ん?と、私の顔をのぞき込む矢野さん。そんなに近くで見ないでほしい。

「何があった?」

スーッと矢野さんの目が細められ、真顔になる。

「何も……」

何もない…まで言わせてもらえなかった。矢野さんの胸に引き寄せられたから。

「誰だよ、美咲にこんな顔させるのは、くそっ…」

ぎゅうぅと、私を抱きしめる腕に力がこもる。

温かいな…

ヤバい。止まった涙がまたこみ上げる。



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