百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜
……もぅ。
私は遥に翻弄されるのは慣れたんだから。
こんな、心臓に悪い口説かれ方されても、
全然ドキドキなんか、しないんだから。
私は、遥の隣に座ると、オムライスを一口食べた。
……はぁ。
やっぱり、冷めちゃったじゃん。
私は、“アホ”と書かれたケチャップを、
すーっ、と卵の上にのばした。
遥は、それを見て、ふっ、と笑うと
そのまま何も言わずに再びオムライスを
食べ始めた。
私は、そんな遥をちらり、と見る。
………彼女のこと
遥から名前聞いたの、初めてだな。
“凛”さんっていうんだ……?
私は少し気になりながらも
深く考えることはせずに、冷めた夕食を
食べ始めた。
まさか、この過去の話が、いろんなことと複雑に絡み合っているなんて
この時はまだ、何も知らなかったんだ。