百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜
私が、じっ、と見つめていると
男性は、くす、と笑って口を開いた。
「迷いこんだのかい…?」
心の中に直接入り込んで来るような、どこか妖美な声に、私は少しの沈黙の後答える。
「いえ…。知り合いがこの路地に入っていくのが見えて……。」
すると、男性はほんの少し首を傾げて
「“知り合い”……ですか…。」と、呟いた。
「ここはあなたのようなお嬢さんが来るところではないですよ。」
そう、続けて言った彼に、私は目を見開いて、そして少し小声で言った。
「ま…まさか、本当に“いかがわしい”バイトとかなんですか……?」
「……え?」
男性は、きょとん、として私を見つめる。
九条 遥め……。
本当に変態だったなんて。
すると、男性は私の言葉に、軽く笑って「そういうことではありませんが……」と答えた。
そして、私の方へ近づいて続ける。
「さぁ、ここの事は忘れて、お家へ帰りなさい。」