居場所をください。



「美鈴ってさ、居場所ほしくて歌手になったんだろ?」


「あー、そんなことも言ったね。」


「見つかったのかよ。」


「んー、まぁ見つかったといえば見つかったし

まだ、といえばまだだし。」


「意味不明。」


「長曽我部さんがいて、

貴也がいて

社長がいて

マスターのあの店があって

いろんな場所に私の居場所はあるけど

まだ完成はしてないというか

正直今の五十嵐美鈴って

長曽我部さんと社長と貴也のお陰だと思うの。

みんながいなくても私がここにいてもいいような

そんな居場所がほしい。」


「……………ファン、ってこと?」


「うん。

今、長曽我部さんのおかげで私は咲いた。

だから長曽我部さんがいなくても

私は咲き続けたい。

そのためには安定したファンって大事だと思うし

歌手の五十嵐美鈴としてそれが一番の

居場所になると思う。」


「じゃあ長曽我部さんは寂しいだろうな。」


「はは。でも長曽我部さんなしなんて

今の私にはまだまだ無理だよ。

長曽我部さんがいて、私がいるんだもん。

それにそれは仕事のことだけで

プライベートは別。

あの人いなくなったら私もう立ち直れない。

もう捨てられるのは絶対嫌だから。」


「……………そうか。」


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