居場所をください。



「ってか読まねーの?手紙。

車で読むためにそのバッグに入れたんだろ?」


「あ、うん。読む。」


私は長曽我部さんに言われ、

30分かけて手紙をほとんど読んだ。


残りはあと一通だけ。


「はぁー、今めっちゃ幸せだ。」


私は最後の手紙を明けながら言った。


「良いもんだろ。

なのに貴也は持って帰らねーからな。」


「絶対バカでしょ。」


私は最後の手紙の封を開けて、

静かに読み出した。


"初めまして。

北海道に住む中3の美香と言います。"


へぇ、受験生か。

じゃあもう少しで受験だね。


"突然ですが、私は中学を卒業したら

親の転勤で神奈川県へ引っ越します。"


へぇ、ずいぶん遠くだね。

北海道から神奈川なんて……


"正直、引っ越すことが

楽しみで仕方ないんです。"


え?


"実は今、私はここでいじめにあっています。

なにか暴力を振るわれているわけではなく、

空気のような存在となっています。

悪口を言われたりするわけではなく、

いないように扱われているのです。"


……………それが一番辛いかもね。

自分の存在意義がわからなくなるもんね。


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