居場所をください。



や、やばい……

もう始まるんだ。


イントロダクションが始まり、

ダンサーの踊ってる音が聞こえる。


これが終われば私の出番。


やばい……。


「美鈴。」


「うー、だめだ。」


結局今回も長曽我部さんに抱きつく。


「大丈夫。」


「うん…」


大丈夫。



15秒ほど抱きついて

私は離れた。


「よし。」


私はイヤモニも装着し、マイクを受けとる。


私が微笑めば

長曽我部さんもそれに応えて微笑む。


「行ってこい。

ちゃんと見てるから。」


「行ってきます!」


私は下りてきたセリの上に乗り、

しゃがんでスタンバイ。


もう一度だけ微笑んで

私は真っ暗なステージへと立った。


大丈夫。一人じゃない。


私のすぐとなりにはハル。


うん、大丈夫。


真っ暗なまま私のアカペラから始まるこのステージ。

私の声に盛り上がる会場。


そして私は明るく照らし出された。




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