居場所をください。



「美鈴ちゃんは?

今、なにがほしい?」


「私は…子供の頃から変わりませんけど

家族と、無償の愛ですね。

………だから、それを手に入れた沖野さんが

すっごくうらやましいです。」


歌手じゃない沖野さんを愛してくれる人がいて

その人と結婚できて…


「………気づいてないだけだよ。」


「え?」


「美鈴ちゃんの周りにもきっといるよ。

損得なんか考えずに、一緒にいる人。

松野くんだって、きっとそんな美鈴ちゃんだから

今、一緒にいるんじゃないかな。

私は松野くんと関わりがないけどさ

きっと、美鈴ちゃんが歌手じゃなくて

普通の高校生だったとしても

好きになったと思うけどな。」


「………そんなことないですよ。

歌手になる前の私なんて、

本当にひどかったですから。

テレビじゃ言えないくらい。」


「でも、前の学校の友達だっているでしょ?」


「………まぁ…」


「ちゃんと見てくれてる人はいるよ。

美鈴ちゃんの根っこの部分をね。

だから大丈夫だよ。

引退なんかしなくても、絶対気づける。

私がそうだったから。」


沖野さんはそういって私に微笑んだけど

私は微笑み返すことができなかった。



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