居場所をください。



目の前に座った大橋さんを確認して

私もまた椅子へ腰かけた。


「…調子、どうですか?」


「最悪。」


私が恐る恐る聞くと、大橋さんは

そう、即答した。

だけど、少し微笑んで


「………それでも、私はやっと解放された。」


そう、続けた。


「なにからですか?」


「事務所から。解雇になったの。

違約金もとられたけど……それでも

ずっと解放されなかったから」


そう言った大橋さんの表情は

今までで一番いい顔をしていた。


「私ね、中1の時に原宿でスカウトされたの。

すぐにモデルの仕事をさせてもらったり

いっぱい誉めてもらえて順風満帆だった。」


大橋さんはそう話し始めた。


「だけどどんどん事務所の黒い部分を知っていって

事務所がいやになったの。

………そんなとき、

私には新しいマネージャーがついた。

そのマネージャーはだんだん厳しくなっていった

事務所とは正反対で、優しくてかっこよくて

頼りになる人だった。

………だから、どんどん惹かれていった。

大好きだった。

中学生の私と、新卒マネージャー。

年の差はあったけど、私は告白したんだ。

怒られる覚悟でね。

だけど、マネージャーは私の気持ちを受け入れた。

それからは仕事もすごい順調だったの。

………だけど、中3の時に彼の子供を妊娠して

中3で子供な私だったけど、稼ぎもあったし

私は親の反対を押しきって産むことにした。

………だけど、彼はそんな私に言ったの。

勘弁してくれよ、って。」


そう言った大橋さんの表情は笑っていたけど

本当に本当に辛そうな顔をしていた。


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