居場所をください。



「━━━そして今に至るわけですが

美鈴は幼い頃から両親がいなかったけど

そういう事実はいつ頃から自覚して

その時どういう風に思いましたか?」


………正直、ここまではっきり聞いてきたのは

これが初めてだ。

ドキュメンタリーだからか?

そういう掘り下げた質問をさせるために

隼也を起用したようにさえ思える。

私の友達だからできるとでも思ったのだろうか…

そんな汚いやり方はやっぱり嫌いだ。


「………んー、

はっきりは覚えていないけど

やっぱり幼稚園に通うようになって

親というものを知ったんだよね。

でもその頃は寂しいとかって思いはなくて

むしろ、他の子供たちがたくさんいて

毎日が楽しかったから

その頃は全然平気だったかな。

むしろ、小学生になってから

みんなの思考も成長して、

それからからかわれるようになったんだ。

小学5年生くらいになったら

やっぱり親がいないことで

からかわれるというより、イジメに

変化していったかな。

イジメられるのは私に原因がある

私がいい子じゃないから

私のお母さんは私を捨てたんだって

そう思うようになってったんだけど

………でも、私には私を庇ってくれる人がいた。

同じ施設で、同じ学年で

同じように、捨てられた記憶がない

気が強い男の子だった。

その人は私をずっと守って、励ましてくれてた。

………だから、私は頑張れたんだ。」


あんな嫌な記憶しか残ってなかった和也は

幼い頃はずっと私を守ってくれていた。

いつも私のそばにいて

いつも私を励ましてくれてた。


そんな、いい男だったんだ。




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