居場所をください。



「どうせ私なんか

ほどほどな幸せしか味わえないと思ってた。

だから、その子に幸せになれるって断言されて

私はすっごく嬉しかったんだ。

私も幸せになっていいんだって…


だから私はそれから毎日バイトしたの。

一刻も早く、愛に触れたかった。

児童養護施設なんか出たくて仕方なかった。

…そしたら、私は今の事務所に拾われた。

私は本当に、施設から出られたんだ。」


「そっか。嬉しかった?」


「うん。

だって何年も待ち望んできたことだもん。

本当に本当に嬉しかったよ。


…でもね、離れてみて気づいた。

愛なんかないと思っていたあそこは

たくさんの愛で溢れていた。

私は、たくさんの人に愛されてた。」


美優ちゃん、栞奈はもちろん

藍子も、和也も、そしてママも。

みんなはいつだって私のそばにいた。


「いつも一緒にいて、一緒に育って

一緒に笑い合ってきた温かい日々を

私はもう、決して忘れたりしない。

私は、親がいなくたって、

あの施設で育ったことを誇りに思ってる。

後ろめたいなんて思わない。

自分を特別だとも思わない。

みんなとは少し違うけど

それでも私は愛されて育った。

愛されて生まれてきた。

だから私は、自分が

シンデレラストーリーだなんて

思わないことにしたの。」


私だって、隼也や貴也と変わらない。

みんなと同じように愛されて生きてきたんだ。



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