居場所をください。
「私は奇跡なんか信じない。
王子様が現れるのを指をくわえて
待っていた訳じゃない。
私は、努力で今ここにいるんだって
胸を張って言いたい。」
頑張ることがこんなに楽しいだなんて
私は知らなかった。
努力が報われたときの快感を
私は決して忘れることはないと思う。
「…そっか。
俺も貴也も、美鈴が頑張ってきてるの
ずっと見てきたからわかるけど
本当にすごい頑張ってたもんな。」
「うん。
私は、自分の道は自分で掴みたかったから。」
これまでも、これからも
私は真っ白な紙に自分で自分の地図を
書き込んでいく。
私は、自分で私を掴みとるんだ。
「………美鈴はさ、どうして歌手になったか
って聞かれたらいつも
居場所がほしかったから
って答えてたじゃん?
そんな居場所は見つかった?」
お、やっと貴也しゃべった。
カメラ回ってからまだ挨拶しかしてないからね。
この人は。
「んー…そうだね。
たくさんの居場所を見つけたよ。
歌を歌って、ライブしてさ
みんなが私に笑顔を向けてくれる。
私の名前を呼んでくれる。
それが本当に幸せな時間なんだ。
私はいつもみんなにいっぱい
幸せをもらってる。なのに、ツアーでさ
"幸せな時間をありがとう"って書かれた
ボードを見つけちゃってさ
こっちのセリフだよって思ったんだけど
同じ時に同じ場所で、
他の人と幸せを感じられるって
本当に幸せなことだなって思ったら
なんか涙出てきちゃって。
この先、私を応援してくれる人が
激減したとしてもさ
少しでも私を求めてくれるなら
まだここにいてもいいよね?」
そんな質問には誰も答えない。
だけど、私は信じてる。
"そこにいて"って誰かが言ってる。
誰かが私を求めてくれる。
私はそう信じてる。