居場所をください。



「…じゃあ、歌手になったきっかけは?

俺も貴也も簡単には知ってるけど

詳しくは知らないしさ。」


そこへ、ちょうど長曽我部さんが

はいってきた。


私はそんな長曽我部さんを

すぐにみつけて

長曽我部さんを見つめたまま

隼也に答えた。


「………カラオケでバイトしてたとき

バイト中の私に、歌を歌えと催促してきた

お客さんがいたの。」


あの頃を思い出しながら

あの時のことを、そのまま。


「その中に、私のマネージャーがいた。

それが私とマネージャーの出会いだった。


22時、私がバイトを終えて店を出ると

しつこく追いかけてきた。

次の日、施設を出ると

車の中で私を待ってた。


私に言ったの。

"ここにいたくないんでしょ?"って。

あの頃の私は一刻も早く施設を出たかったから

騙されたつもりでついてきたの。

"俺が咲かせてやる"って

その言葉だけを信じて。」


あの時の強い眼差しと

なにかを確信したような発言に

私はなにかを感じた。

素性の知らない長曽我部さんだったけど

この人についていきたいと

心の底から思ったんだ。


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