居場所をください。
「……松野くんが私に証人を求めて来た時、
私は一度反対したの。
まだ18歳、高校生で結婚するのは
まだ早すぎると思ったから。
それでもし、今後すれ違うようなことになって
離婚と言う選択肢を選ばざるおうえない時、
美鈴はきっとまた孤独感に襲われるから
って私が言ったら、松野くんはね
美鈴じゃなくて、俺の方がひとりになりたくなくて
こんな理由じゃどうかもしれませんけど
俺も早く安心感がほしいんです
って言ったのね。
親に捨てられたことはないけど
でも親のいない悲しみはわかるから、って。」
……へぇ、貴也がねぇ…
「…なに見てんだよ。」
「別にぃ?
それで?どうしたの?」
「はは。でね、最後に
長曽我部さんが美鈴を独り占めにしてて
美鈴が辛いときにはいつも長曽我部さんで
長曽我部さんは長曽我部さんで
その立場を全く譲ろうとしてくれないくせに
自分は結婚して新しい家族を作ろうとしてる
だから、その前に長曽我部さんから
美鈴を奪ってやりたいんですって言って
なんだかそれにも私笑っちゃって。
美鈴はいつの間に、
こんなに居場所を作ったんだろう
って思ったのね。
私が何年もかけて作ってあげようもしたものを
松野くんも、長曽我部さんも
すぐに作りあげていた。
で、極めつけに
美鈴の幸せを俺にくださいって真剣に言われて
私は証人欄にサインすることにしたの。
必ず幸せにするといった長曽我部さんと
美鈴の幸せをほしいといった松野くん。
どちらも本当に美鈴のことを愛していて
私にはもう、それを願うことしかできなかった。
あとは美鈴次第、美鈴が願うなら
私も結婚を認めようって思ったの。」
「ママ……」
「あなたは私の子供第1号で
私はあなたと一緒に母親になっていった。
まだ首も座っていないあなたを抱き抱えた日
この子の幸せのために全力で頑張ろうって
そう決めたのにね
……親なんて、寂しいものよ。
子供を幸せにするのはパートナーで
親のできることなんて
それを願うことしかできないんだから。」
「そんなことないよ。
……私、ここで育ってよかったよ。
きっとここにいなかったら私、
歌手になってなかったもん。
ここにいたから歌手になれて、
歌手になれたから…貴也とも出会えたんだし。」
そしてここにいたからこそ
上に立とうとか、誰かについていこうとか
そういうのじゃなくて
みんなと一緒に並んでいたい
って思えるようになったんだと思う。
みんなは家族のはずなのに
なぜか上下関係のあるここで
私が育ってきたから。
上下関係のあるここで
一番偉そうにしていた私だからこそ
そう、学んだんだよね。