居場所をください。



…つーことで、

すっかり風呂上がりな美鈴をつれて

俺らは普通の、本当に普通のお好み焼き屋に

バレバレな美鈴と入った。


「五十嵐美鈴さんですよね?

サインってお願いできますか…?」


なんて、店員が慎重に聞きに来る始末。


「いいですよ!」


美鈴もすっかり仕事モードだしな。

なんつーか、俺と飯の時はいつも隠してくるから

こういうところ初めて見る。

……美鈴のサインも、初めて見る。


「ん、どうぞ!」


「ありがとうございます!

ごゆっくりどうぞ!」


……すっかり、芸能人なんだよな、やっぱ…


「ライブ前に高橋と亜樹とご飯なんて

初めてだよね。

東京ならあるけど、地方でなんてさ。」


「あー、そうだな。

ってか俺なんて大阪初めて来たし。」


「え、そうなの?

亜樹は?」


「俺は中学んとき修学旅行できたけど。」


えー、まじかよ。豪華だな。

俺んとこの中学なんて京都奈良だけだったし。


「おい、話よりなに頼むか決めろよー」


「はいはい。

私はチーズで、高橋は豚玉ね。」


「勝手に決めんな。」


「いいじゃん、半分こしようよ。」


「はいはい」


どうせ半分も食わないんだろ。

もうわかったよ。

俺をつかってうまい具合に長曽我部さんから

もっと食べろ!と言われることから回避してんだろ。

絶対バレると思うけどな。



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