居場所をください。



それから数分後、スタッフがまた動きだし、

そのあとすぐに、またステージへとライトが当たり

その瞬間、一気に盛り上がる会場と

それとは真逆の、俺の聴いたことないメロディーが

会場に響き渡り、そのあとすぐに

サブステージからゆっくりと

美鈴がせり上がってきた。

まっすぐと上を見て、その表情は見えないけど

マイクを胸に当て、ひたすら上だけを見ていた。


「あ、これ新曲だ。」


「え、新曲?」


……ってか、裕太はちゃっかり

美鈴の曲知ってんのな。

俺、新曲なんてまだ一回も聴いたことねーよ…


「これめっちゃ切ないやつだよ」


切ないやつだよって…

それをお前が聴いてんのがまた似合わねーな…


ステージに目を戻すと、

美鈴はまだ上を見つめていて

……かと思えば顔を下ろして


「………え?」


俺のことを、じっと見つめた。

さっきまで一回も俺の方を見てなかったのに

今だけは俺だけを見るかのように

俺をじっと見つめて


『"無邪気に笑う君がすごく眩しくて

その笑顔を見てると すごく寂しくて

なんでかな 泣いてしまいそうだよ"』


切ない顔で、そう歌い始めた。



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