居場所をください。



『"自由な羽をもって飛び立とうとする君

追いかけたくて私も必死に羽ばたこう

とするけど どうしても追い付けない


疲れても羽下ろす場所すらないのにね"』


そうやって悲しそうに少しだけ笑う美鈴は

やっぱり俺だけを見つめていた。


『"ねぇ 君にはどんな風に映ってる?

こんな私でも君に追い付ける日が来るのかな

そこから見る私は滑稽ですか?

どうかこんな私を笑い飛ばしてください"』


そう歌う美鈴はいつもとは別人で

俺の知る、五十嵐美鈴だった。


感情のない、冷めた顔をした

あの頃の美鈴だった。


『"どうか君だけは 君だけは

いつまでも変わらずそこにいて

私もいつまでたっても変われないから

そばにいることを 許して"』


そういって見つめる先も俺で

美鈴の手を伸ばす先にも俺がいて


ここには俺と美鈴しかいないような

そんな感覚だった。


『"私にできることなんてなにもないけど

私が私でいられるのは 君がいるからだから"』


そう、歌い終わるその時まで

美鈴は俺の目から一回も目を離すことはなかった。




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