居場所をください。
『そういえば今日は高橋くんも見てないや。』
え。
『あ、確かに!
高橋くんもお休み?』
え。
『ううん、高橋はいるよ。
でも今日は友達とこのライブ来る約束あるらしくて
こっちには来なかったみたい!』
……おいおい、お前ら…
なんつーこと話してるんだよ!!
『ねぇ?高橋見たよー!って人いるよね?』
なんつーこと聞いてんだ、美鈴は…
俺の連れがいるって知ってんだろ、お前は……
『高橋くんって、
もともと美鈴ちゃんの友達なんでしょ?
なんでここでバイトすることになったの?
美鈴ちゃんとこの事務所って
バイトなんて雇ってないんでしょ?』
いや、だから……
もう俺の話はやめてくれよ…
『んー…たぶんだけどね
私ってすっごい緊張しいでしょ?』
『あーそうだね。
美鈴ちゃんは緊張で別人になるね。』
『でしょ。
それでよくハルとかユリ姉が
ライブ前に私の楽屋に送り込まれて
よくやってくるけどさ
ライブが始まる前はやっぱりすっごい緊張してて
長曽我部さんに抱きつきまくってるのね。
あの、ヒカリのMV見ればわかるけどさ。』
お、おう。
確かにお前は長曽我部さんに
抱きつきすぎな気がするぞ。
実の兄だろ?
俺なら絶対無理だわ……
『ずっと私はそれだけだったんだけど
高橋が今のバイト初めてからさ
あのシーンを撮ってるのが高橋になって
だから私がステージに上がる瞬間まで
高橋もそばにいるんだけど
……なんだろな。
高橋見るとね、ちょっと昔に戻れるの。
長曽我部さんがいると弱くなれる。
だけど高橋がいると、強がっていられる。
だからかなー。
高橋がそこにいるだけで
なんかすっごい落ち着くんだよね。
長曽我部さんはそれがわかってたんじゃないかな。』
……強がっていられる、な…
そうだな。お前は俺の前だと
いっつも生意気で、冷たくて、適当で、
誰よりも負けず嫌いだもんな。