わたしは元婚約者の弟に恋をしました
休みの日は毎週のように会い、彼といるだけで嫌なことを忘れられたし、心が弾むのも自覚していた。そんな彼との時間を長続きさせたくて、わたしはわがままも言わなかったし、彼もわたしに優しくしてくれていた。
ある意味、そんなわたしと彼が婚約者になるのは必然だと信じて疑わなかった。
彼は会社と実家が離れているのもあり、一人暮らしをしていたが、わたしは自宅住まいだ。そのため、まず彼はわたしの両親に会ってくれた。
あまりわたしの両親はわたしの交友関係についてあれこれ言ったりはしない。けれど、どこかで一人娘の将来に対する不安があったのか、わたしの両親は結婚の話を聞き、手放しで喜んでくれた。彼と会ってからは、彼をべた褒めで、もう彼を家族としてみなしていたようだ。
そんな両親と彼に後押しされ、わたしは今日、彼の両親が好きだという苺のショートケーキを手に会いに行くことになった。
彼は昨夜から実家に帰省していたため、駅まで彼に迎えに来てもらった。そこから徒歩十分ほど離れた彼の家にいく途中というのがまさしく今の状況だ。
なぜ足を止めたのか。それは緊張してしまったから。
同じ県内にも関わらず、このあたりは初めて足を踏み入れる場所だ。そんな目新しい景色はわたしの緊張感をかき立ててしまった。せめてもの緊張をときほぐすために、彼に自分の身なりについてどう思うか確認したのだ。
「もうすぐ?」
「あと角を曲がって、三分くらいのところだよ」
彼は目の前の角を指差す。
わたしは緊張で凝り固まる心を柔らかくするために、精一杯の深呼吸をした。
「今日、もう一人会ってほしい人がいるんだ」
「実家でじゃなくて?」
「ああ。この近くに来てくれるらしいから、待ち合わせをしている。俺の大事な人なんだ」
「誰?」
「それは後で言うよ」
わたしは首を傾げながらも、彼の提案に頷いた。
彼と一緒なら誰に会っても気にならない。
そのとき、彼の指した角から人影が飛び出してきた。その人影が女性だと遅れて気づき、遅れて彼女の装い視界に収めていた。
ある意味、そんなわたしと彼が婚約者になるのは必然だと信じて疑わなかった。
彼は会社と実家が離れているのもあり、一人暮らしをしていたが、わたしは自宅住まいだ。そのため、まず彼はわたしの両親に会ってくれた。
あまりわたしの両親はわたしの交友関係についてあれこれ言ったりはしない。けれど、どこかで一人娘の将来に対する不安があったのか、わたしの両親は結婚の話を聞き、手放しで喜んでくれた。彼と会ってからは、彼をべた褒めで、もう彼を家族としてみなしていたようだ。
そんな両親と彼に後押しされ、わたしは今日、彼の両親が好きだという苺のショートケーキを手に会いに行くことになった。
彼は昨夜から実家に帰省していたため、駅まで彼に迎えに来てもらった。そこから徒歩十分ほど離れた彼の家にいく途中というのがまさしく今の状況だ。
なぜ足を止めたのか。それは緊張してしまったから。
同じ県内にも関わらず、このあたりは初めて足を踏み入れる場所だ。そんな目新しい景色はわたしの緊張感をかき立ててしまった。せめてもの緊張をときほぐすために、彼に自分の身なりについてどう思うか確認したのだ。
「もうすぐ?」
「あと角を曲がって、三分くらいのところだよ」
彼は目の前の角を指差す。
わたしは緊張で凝り固まる心を柔らかくするために、精一杯の深呼吸をした。
「今日、もう一人会ってほしい人がいるんだ」
「実家でじゃなくて?」
「ああ。この近くに来てくれるらしいから、待ち合わせをしている。俺の大事な人なんだ」
「誰?」
「それは後で言うよ」
わたしは首を傾げながらも、彼の提案に頷いた。
彼と一緒なら誰に会っても気にならない。
そのとき、彼の指した角から人影が飛び出してきた。その人影が女性だと遅れて気づき、遅れて彼女の装い視界に収めていた。