ピュア・ラブ
私は、当然飼うと決めて病院に連れて来た。
だけど、そう言う人ばかりではないらしい。
動物病院は自由診療だ。治療代もバカにならないだろう。それでもいい、私のたった一人の家族になるのだ、満足のいく治療をしてあげたい。あの時、こうしていればと後悔したくない。
名前はもう決まっていた。
「モモ」
私は、猫の名前をそう書いた。
必ず猫を飼う。そう決めていた。今のアパートもペット可を重点に決めた物だ。
買うのではなく、いつか廻り逢う猫の為に住まいを決めた。命は買わない。私を頼りにきっと逢うはずだと信じてきた。
それが、今日拾った「モモ」だ。

「お名前は決まっていたんですね」
「え?」
「拾われたのに、ほら、名前が書いてあるから」
「あ、はい」
「何か容体の変化とかありましたらご連絡します。これが診察券、次回からは、これをお持ちください」
「わかりました」

あまり上手とは言えない字体で、診察券に「黒川 モモ」と猫の名前が書かれていた。字は大きく、きっとおおらかな性格の先生なのだろう。
私の子供。家族。自分で名付けた愛おしい名前。診察券をじっと見つめてしまった。

「今日は、治療代は結構です。明日また来てください。入院や検査の結果もありますので、そこで精算しますから」
「わかりました」
「朝は、9時から診療して、夜は10時までです。その間の都合のいい時間で来て下さい」
「よろしくおねがいします」

私は、受付にいる獣医に頭を下げ、バッグに財布をしまった。
チラッと診察室をみて、「頑張れ」と心で声をかける。
そして、軽く獣医に会釈すると、病院のドアを開けた。
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