ピュア・ラブ
今日の私は、気が急いていた。
時間が過ぎるのがとても遅く感じたし、時間を気にしたのもそう経験ない。
モモの様子が気になる。獣医は昨日ああいっていたが、検査の結果、悪い方向だったらどうしようかと、気が気じゃなかった。
あれだけの傷があるのだから、すぐに退院は出来ないだろう。だけど、会えると思うだけで、嬉しかった。
工場では終業のベルが鳴った。
私は、持ち場を離れ、タイムカードを急いで押すと、ロッカールームに急いだ。
素早く着がえ、他の工員が来る頃には、工場を出ていた。
動物病院の看板が見え、私は急ぐ。
自転車を止めると、病院のドア前で息を整えた。

「はあ、疲れた」

深呼吸をして呼吸を整えると、病院のドアを開けた。

「こんにちは」

にこやかにあいさつをしてくれたのは、昨日はいなかった受付の女性だ。
私は、会釈だけをして、診察券を渡す。

「お預かりします。お待ちください」

そうか、昨日は夜だったから受付がいなかったのか。
待合室では、昨日とは違い、患者がいた。
二人程椅子に座っていたが、どちらもイヌのリードを持っていた。
この犬たちはどんな病気なのだろう。きっと人間と同じで、待っているときは嫌な気分なのだろうな。
持っていた本でも読もうかと、バッグに手を入れ、ふと、座っていた横にあったマガジンラックに目がいった。
ペット用品のカタログと雑誌だった。
私は、猫雑誌を手に取り、読む。
最新号ではないが、子猫特集だった。
目次を見て、特集ページを開く。そこに写っている子猫は、どれも可愛く、健康そうだった。
爪きりやトイレトレーニング、食事に至るまで、事細かに書かれていた。表紙を見てタイトルを覚えると、帰りに本屋に寄ることを考えた。
初めて猫を飼う。飼い方を勉強しなければ。
雑誌に没頭していると、隣にいた犬の飼い主は、会計をして、最後の一人が帰る所だった。

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