ピュア・ラブ
「大変だった、6年間。言葉が話せない動物を助けるにはどうしたらいいか、毎日悩んだし、覚えることも沢山あって。特に実習は心が折れることも沢山あったよ。薬の名前を覚えるのは苦手だったなあ」

苦手だったか、私もこれを覚えろと言われたら、きっと投げ出していたに違いない。それに比べたら、橘君はえらい。

「でも黒川なら俺みたいに苦労しないで覚えられたよ、きっと」

橘君の読心術も時には外れるみたいだ。
私は、きっと覚えられない。勉強で一番嫌いだったのは、化学と物理だったから。
算数も苦手だった。
今でも思い出す、父親の言葉。
「こんな計算も分からんのか! バカな娘だ」そう言って殴った。
短気で教養がない父親に言われていたことがトラウマとなり、小学校では算数の時間になると、お腹が痛くなった。
それでもこの状況に負けると私の明日はない。そう思って、痛いお腹を我慢して、授業を受けた。
その甲斐もあって、数学は得意科目になった。

「あ、でも、黒川、物理と化学の成績はだめだったな。じゃあ、苦手だろうな」

どこまでの私を監察していたのだろう。
ライバルとでも思っていたから、注意をして成績を見ていたに違いない。昨日のことは削除して生きて行きたい。だから、高校生活は削除しているのだ。今さら同級生に会って、復活したくない。
それに橘君は私をよく見ていたらしい。それが、嫌だ。
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