ピュア・ラブ

4

やっとモモが我が家に帰って来る。
この日をどれだけ待ち望んだかしれない。
モモには悪かったけれど、橘君にどうしても会いたくなかった私は、受付がいる時間帯に電話をしてモモの様子を聞くだけにしていた。
モモに会いたい。モモを抱きたい。その気持ちをぐっと堪え、この埋め合わせは絶対にするからと、病院には行かずにいた。

「モモ、待っててね。すぐに行くから」

もう洗濯も掃除もどうでもよく、病院の診察が始まる9時には、出られる支度をしていた。
カゴには、新品のタオルをカゴにちゃんとおさまる様に細工をしてセットした。
ゲージは取り敢えずレンタルにして、設置した。
私の住んでいるアパートは1LDKだ。ワンルームでもよかったけれど、やはり少しでも広い方がいい。
必要最低限しかない家財道具だが、モモが加わることで、広く感じていた家の中は、狭くなった。
帰って来るときに部屋が暑いといけない。私は、エアコンの温度を28度に設定をして、スイッチを入れる。
こうすれば、家の中に入ってもムッとすることはない。
気持ちが昂り、落ち着かない。
最後に鏡を見て髪を整え、モモの待つ病院に向かった。
外は暑かったけれど、朝の風はまだ清々しい。
自転車で休日を走るとなかなか気持ちがいいものだ。
猫は散歩しないのだろうか。モモが来てから、ネット動画にハマり、猫の動画をずっと見ていた。
イヌのようにリードをつけて公園を散歩している動画もあった。
モモとそんなことが出来たらいいなと思ったけれど、猫の性格にもよるだろう。自分がそうしたいからと言って、モモに無理強いはさせられない。
「たちばな動物病院」の看板が見えると、私は、自転車を漕ぐ足に力が入った。
一分、一秒でもいい。早くモモに会いたかった。
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