ピュア・ラブ

金を拾い集める無様な姿を見下ろし、私は、家の中に入った。
金の無心が始まったのは今に始まったことじゃない。
最初は高校に入り、バイトを始めた頃からだった。
自分でも辛い選択だったと今でも思うけど、新聞配達のバイトをした。
夕刊の配達は、学校があるから出来なかったから、朝刊の配達だけをしていた。
雨や台風、雪の日も配達をした。
初めて給料が入った時は、とても嬉しかった。
今まで親に嫌味を言われながら買って貰っていた、文房具や教材をこれで買うことができる。そう思うだけで、心は弾んだ。
生徒会費、ＰＴＡ会費と学校に必要なお金を支払い、通学の為の定期券を買う。好きなお弁当のおかずを買うことさえ出来た。
この時、初めてお金の強さを知った。
ご飯や、お菓子も無かった。
弁当は、一人で食べていたから、おかずのチェックまでされなかったが、悲惨なものだった。
母親は、料理をするのが苦手で、外に飲み歩いてばかりいたし、父親はタクシーの運転手をしていたが、雨が降ると、「すみません、具合が悪くなって」と会社をずる休みした。そんなことをしているから、会社は直ぐにクビになっていた。
「タクシーの運転手は直ぐに働ける」そんなことばかりを言っていた。
明け、公休とシフトがあるらしいが、私が顔を見るのは四日に一日くらいだった。
中学になると、その理由が分かった。雀荘に行き、麻雀をしていたのだ。
「タクシーの運転手なんか碌なもんじゃねえよ」そう言った父親。それはお前もだ。
賭け麻雀は、負ける時も勝つ時も金額が大きいらしく、ギャンブルの恐ろしさをしった。
短気極まりない父親は、ちょっとしたことで、私を殴った。テレビを観ていて、そのチャンネルを取られ、少しむくれてしまうと、「何だその顔は！　誰に食べさせてもらっているんだ！」そう言っては、平手打ちにした。
時には髪を掴み引きずり回された。決してしゃべらなく謝らない私が憎たらしかったのだろう。
これだけ短気なのに、血管が切れないのだろうか。切れてぽっくりと死んでしまえばスッキリすると、殴られながらそう思っていた。