ピュア・ラブ
蹲って動かない猫をバスタオルで優しく包抱き上げると、まだ、片手にすっぽりと収まるほどの子猫だった。
まだ泣いている。大丈夫だわ。
私は、座り込んで、目を閉じる。
動物病院、確か何処かにあったはず。工場の帰りに看板を見た憶えがある。動物を飼ったことがないから、気にも止めていなかった。
思い出すのよ、落ち着いて。
腕の中にいる猫の命は私が握っている。何とかして病院に連れていきたい。

「あ! あそこだわ」

工場からの帰り道の記憶を辿ると、大通りのコンビニがある交差点に看板があったことを思い出した。
少し危ないかと思ったけれど、これだけ衰弱していればカゴから落ちることはないだろう。そう判断して、バスタオルでくるみ、持ってきた袋に入れ、自転車のカゴに入れた。

「怖くないからね」

もうすでに鳴き声も出ない状態になっていた。だけど、子猫はあまり開いていない目で私の顔をしっかりと見て、声は出ていないが、口を開けて鳴くような様子を見せた。

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