ピュア・ラブ
振動で何かあったら大変だ。
縁石の所はブレーキをかけ自転車を漕ぐ。
気持ちは焦っているが、自分に落ち着くように言い聞かせる。
すぐに目的の動物病院の看板が見えた。「夜間診療」と病院名の下に書いてあった。

「たちばな動物病院。良かった、診察してもらえるわ」

病院が閉まっていたらどうしようかと思っていたが、「夜間診療」と書いてあり、安心する。
病院自体は、古くからあるような感じだった。人間の病院のように無機質ではないが、築年数は経っているようだ。
自転車を病院の駐車場にとめ、子猫を入れた袋を取り出す。

「ネコちゃん、もう大丈夫だからね」

袋をカゴから取出し、底を手で支える。猫の重さは感じられず、心配になる。
病院のドアを開けると、患者は誰もいなかった。受付にも人がいなく、私は、中に向かって声をかけた。

「すみません! お願いします!」
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