婚約者は高校生
散策、とはいっても彼女は俺から一歩下がって後ろからついてきただけ。
普通なら「きれいなところですね」だとか、「静かですね」だとか話を切り出す女性が多いものだけど、さすがに女子高生にそんな余裕はないか。
見合い自体初めてのことなんだろうし。
さて。
断るにしても、どう話をしたらよいものか。
俺は後ろを振り返り、彼女に声をかける。
「姫紀さん」
「はい」
澄んだきれいな瞳が俺を捉える。
「なんだか、悪かったね。お見合いなんて本当はしたくなかったんじゃない?」
その言葉に彼女は「いいえ」と、はっきり否定の言葉を口にした。
「このお見合いは私が望んだものです」
望んだもの、か。
何が欲しいんだ?
お金というわけではないはずだから、俺の立場や見栄えのよい彼氏が欲しいといったところか。
正直、そういったことばかりで飽き飽きしてるんだけどな。
それでなくても仕事が忙しいのに、こんな子供の相手をしている暇などない。
俺はこれみよがしにため息をついて、彼女を冷たく一瞥する。
「…俺のことを知っていてこの見合いを決めたのか?」
「いいえ。お見合いをしたいと言いましたら、紹介されただけですので。よくは知りませんでした」
「そうか。見合いをしたいだけなら他をあたってくれないか」