魅惑な彼の策略にはまりました
育江もメガネを押し上げながら言う。


「喧嘩は早くやめるべきです。ジャックが来日したのが、可愛い弟子を連れ戻すためだったらどうするんですか?」


そんなこと……ないとは言えない。

宗十郎の師匠は、あいつを気に入ったからずっと手元に置いておきたがったんだもん。
また、宗十郎のやりたい特殊メイクの仕事を餌に、連れ去ってしまうこともあり得ない話じゃない。

ちょっと、待ってよ。
そもそも私が口出しできるところじゃなくない?

でも、こんな気まずい感じで宗十郎が本当に渡米してしまったらどうしよう。
きっと、もう会う機会は訪れないだろう。それでいいの?

20代の時は、渡米する宗十郎を笑って見送れた。

だけど、今はもう駄目だ。

宗十郎に金輪際会えなくなるなんて、絶対に……絶対に嫌だ。


「あ」


「どうしました?四季さん」


育江が顔を覗き込む。


「見つけたかもしんない」


留美子も育江もハテナといった表情。
それはそうだろう。私が見つけたのは私の内側の話。奥底に小さくなっていたある感情の話。
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