魅惑な彼の策略にはまりました
渋谷駅から宮益坂上り、定時を過ぎたのをいいことに本社には直帰のメールを打つ。
急ぎの仕事はない。

行こう、このまま走って会いに行こう。

聞いたことのある専門学校のエントランスにたどりついた。
なんという偶然か、ちょうど宗十郎が現れたのだ。

隣にいる銀髪の初老の紳士がジャックだろうか。
会ったことがないから確定はできないけれど、おそらくはそうだろう。

宗十郎が私を見つけた。
それから、ジャックとその付き人らしき若者に一言告げると、二人から離れる。
ジャックたちがタクシーに乗り込んだのを見届けてから、路上に立ち尽くす私の元へ、真っ直ぐ歩いてくる。


「何しに来たの?」


宗十郎はいたって冷静という様子で私を見下ろした。

私は顔を上げ、宗十郎の薄い色の瞳を見つめる。


「えっと」


言葉に詰まりそうになる。
あんな別れ方をして、怒っているだろうか。

だけど、ここで引いたら後悔するに違いない。

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