魅惑な彼の策略にはまりました
「また、知り合いの特殊メイクスタジオを紹介するなんてチラつかせてるけど、あのおっさん、信用ならねーから。悪いやつじゃないけど、調子いいんだよな」


ほっとしたような気持ちと、宗十郎がチャンスを見送ったのではという心配がかすめる。


「いつかは勉強しにいくんでしょう?」


「希望ね、希望。そん時は自力だろうから、今の内にコネさがしとかなきゃな」


宗十郎がめずらしくおどけたように笑った。

繋いだ手は柔らかく、あたたかく、こうしていることがずっと普通なことみたいだった。

逆に言えば、どうしてもっと早くこの手を繋がなかったのだろう。
そんなことまで思った。


少し歩き、ビルの谷間にワゴンのコーヒー店とベンチを見つけた。
私たちはコーヒーを1つずつ買い、ベンチのひとつにかける。

手は離してしまったけれど隣に並んでいる。貴重な一瞬に思えた。


「もう、会わないほうがいいかと思ってた」


宗十郎がぽつんと言った。
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