魅惑な彼の策略にはまりました
「私があんなこと言ったから?」


私は宗十郎の顔を見る。


「四季を混乱させたのは自覚がある。調子いいよな。恋人ごっこしようとか言っておいて、何度か手ェ出しかけて、挙句『付き合おう』なんて言っても、わけわかんないよな」


一応、自覚はあったのね。そんなことを心の中で呟く。


「四季に八つ当たりだって言われて、ハッとした。そうなのかもしれないって。俺は四季と向き合っているつもりで、過去の嫌な思い出に復讐していたのかも」


「それって、若い頃の失恋ってやつ?ごめん、リリからさわりだけ聞いた」


そっか、と口の中で宗十郎が答える。
言いたくないことなら聞かなくてもいいと思った。だけど、宗十郎が隠す気がないことも気づいている。私は黙って、宗十郎の言葉を待った。

コーヒーを一口、それから宗十郎は口を開いた。


「ガッコ出てテレビ藤に入って、21の時だよ。好きになったのはモデル」


宗十郎は名前を口にした。

それは、私たち世代なら当時誰もがあらゆる雑誌で見かけた人気モデルだった。

……有名な男性モデルの名前だった。


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