魅惑な彼の策略にはまりました
私は怒鳴って立ち上がる。
まだお酒は回ってないけれど、一度頭を切り替えたくてトイレへ向かった。

たぶん、私の背をふたりが見ている。呆れた目で。

自分でもかるーく馬鹿だと思ってるわよ。
知り合ったばっかの男とホテルに行く道中、恋のはじまりを勝手に予感していたことを。
馬鹿過ぎて死にたい!

私、高原四季は、番組制作会社を経て、現在は都内の貸しスタジオ運営会社に勤務している。
これでも、麻布スタジオと六本木スタジオの責任者だ。

リリと宗十郎は制作会社で働いていた頃に知り合い、なんだかんだで10年目の友人。
あいつらは私の恋愛遍歴の多くを知っていることになる。

トイレの鏡に向き合う。
いつもの私が映っている。

顔立ち、悪くない。綺麗系女優に似てるって言われたことだってある。

スタイル、くびれはある。身長のおかげで、縦に長く見えるのはいい。

それでも確かに、20代と比べたら肌ツヤも張りも段違いに衰えている。
深みのあるブラウンに染めたセンター分けボブも、前よりコシが弱くぱさついている。

あと、回復の遅さは痛いほど感じる。
仕事で徹夜はすでにできないし、オールで飲み会とかキツすぎて考えらんない34歳。

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