魅惑な彼の策略にはまりました
宗十郎は賢明にも下手な口を挟まなかった。ただ、リリがどすんと拳をテーブルに置いたのを黙って見ていただけ。

その重い音に顔をあげた私が見たのは、怒りを押し殺すリリの顔。


「その雑誌やネットニュースで見ましたーっていうステレオタイプの思考、死ねばいいと思う」


恐ろしいほどにドスの効いた声で、私は手にあったお箸をかちゃんと箸置きに戻した。
壮絶な地雷を踏んだことがわかった。


「卵子っていうのは、生まれた瞬間から老化が始まってんのよ。30になったら急に老化しだすもんじゃない」


「……ハイ」


「高齢出産のリスクは絶対じゃないの。あくまで統計データ。40歳を超えれば、染色体異常なんかのエラーも多少は起こりやすくなる。流産率が上がるのはそのせい。だけど、染色体異常は若くたって起こるのよ。妊娠出産のリスクは、母体や胎児個人、そして運によるところが大きい。……マスコミに踊らされた『早く産め』思想で語ってるうちは、四季は本質的に子どもなんか欲しくないのよ」


忘れていた。
リリはマタニティフィットネスの有資格者だ。この分野は非常に詳しい。

そして、結婚していた20代の頃、子どもを死産している。
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