魅惑な彼の策略にはまりました
そんなアネラは、ずかずかとスタッフルームに入ってくると、振り向かないでいた宗十郎に背中から抱きついた。


「ソウー!!会いたかったー!!」


「はいはい」


宗十郎は首に絡みついたアネラの腕を剥がすと、向き直った。『距離、近っ』と心の中でつぶやく私。ふたりはカップルのような近距離で向かい合っている。


「なんでこの前のコレクションはきてくれなかったの?アネラはソウのメイクじゃないと満足できないって知ってるでしょ?」


「悪い。日本ガールズコレクションに先約があった」


「アネラが蹴ったヤツね。アネラが蹴ったら、ソウも断らなきゃダメでしょ?ソウのバカっ!」


こんな時に思う。一人称が自分の名前の女って苦手。
一般社会じゃ通用しないんだぞ、それは。

立派にオバサン目線で苛々している私は、ひがんでいるわけじゃない。そう信じたい。


「今日はソウのパワーでアネラを輝かせてね」


「ああ、わかったよ」


「絶対よ?あと、夜はいつものお店、取ってあるから。逃げちゃ駄目」


至近距離で宗十郎の細くて繊細な指先をアネラが弄ぶ。
見るつもりはなくても目の前で行われてるもので、目をそらすのも不自然。

イチャつくな、人んちのスタッフルームで。
なんで、私が所在ない気持ちにならなきゃいけないのよ。
< 34 / 111 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop