魅惑な彼の策略にはまりました
「瓶ごと飲んでたの!?」


宗十郎ごと押し込むように玄関に入り、ウィスキーをとりあげる。
私も好きなメーカーズマークですけれど、瓶ごとってのは私も試したことがないわ。


「いいだろ、別に」


よくないでしょ。

私は勝手に靴を脱ぎ、ずかずかと宗十郎の部屋に入る。
カーテンは開け放たれ、街の灯りが入る部屋は、しゃれた籐のルームランプがひとつ光るだけで、薄暗かった。

テーブルにどんとメーカーズマークを置く。
呆れた。テーブルには他にも飲み終わったビールやハイボールの缶が転がっている。

のろのろと後ろをついてきた宗十郎が、またしてもメーカーズマークを手に取る。


「もう、やめときな」


メーカーズマークは瓶に三分の一残る程度だ。
でも、これ以上、飲ませちゃいけない。


「四季はねーちゃんじゃないだろ」


「ねーちゃんみたいなもんよ」


宗十郎が手を伸ばすので、ウィスキーを抱え、一歩下がる。


「ねーちゃんじゃない」


宗十郎が言うなりぐっと距離を縮めた。
ウィスキーはあっさり奪い返され、宗十郎はそれを手近の棚に置いた。

そして反対の手で私の腕をつかむ。
引き寄せようとする力と、身を引く私の抵抗。

誤算だったのは、宗十郎がしたたか酔っていたということ。
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