魅惑な彼の策略にはまりました
可愛い。

その何年も聞いていないワードに瞬時に頬が熱くなった。

恥ずかしい。
こんな暗闇でもきっと宗十郎には見えているだろう。私が真っ赤になって照れているところが。


「やめてよ、からかって楽しい?」


声が泣きそうに響いてしまう。


「卑屈になってんのはどっちだよ。自分に自信なくすとブスになるぞ」


「も……もう、とっくにブスだもん。いいのよ、34歳にそういう需要ないし」


宗十郎の唇が近づいて、思わずぎゅっと目をつぶった。

乙女か、私は!

そんなことを突っ込みながら待った感触は、唇ではなく額に降ってきた。
宗十郎の優しいキスはおでこに落とされた。


「34歳・可愛い女でいろよ。このまま意地っ張りで、性格可愛くなくて、プライド高い女のままでいたいの?“寂しい”から抜け出せないぞ」


唇を離し、宗十郎は酔眼で問う。


そんなことは、わかっている。
私のプライドなんか無意味だ。

独女を蝕む“寂しい”の呪いに打ち勝ちたいなら、このまま凝り固まっていちゃ駄目なんだ。


「……だからって、こんなこと」


「四季がドキドキしてるの、わかるよ。これだけくっついてたら、伝わるよ」


宗十郎がふふっと笑って、私は余計泣きそうに混乱した。
確かに私は、ものすごく緊張し、そして胸を高鳴らせていた。

やめて。もういい加減、どいてよ。
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