魅惑な彼の策略にはまりました
「じゃ、今夜もふたりで楽しむか」


屈託なく吐かれる大嘘に微笑み返して、私は答えた。


「宗十郎でないと満足できないって知ってるでしょ?」


蒼白の浮気男は、この騒ぎで落っことした鞄を手にするとくるりと踵を返し、足早に去っていった。

さようなら、一刻も早く、あんたの悪行を奥方が知ることを願います。




「ソウ」


顔を見合わせる私と宗十郎に近づいてくるのは、離れた位置で事の成り行きを見守っていたアネラだ。
話はすべて聞こえていただろう。


「今の本当?」


アネラの問いは詰問口調ではなかった。
恐る恐る、信じられないとでもいうような声だ。


「バイって件なら、本当。業界でも一部しか知らないけど」


大嘘をさらっと吐き続ける宗十郎に、アネラが首を振る。
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