恋のお試し期間
「1つだけ聞いてもいい?」
「なに?」
「慶吾さんが好きなものってなに?」
「里真」
「…食べ物ですよ。もう。分かっててそういう事いう」
「分かってて返事したんだけどな。…あ。ごめん、行かないと」
「ごちそうさまでした」
厨房を出てお会計をしようと置かれた札を持ってレジへ向かう。
先にしている女性二人組。その間に財布を出して幾らだろうかと見る。
そこには佐伯の字で「部屋で待っててね」とだけ。金額は書いてない。
「……あ。ど、どうぞ。ありがとうございました」
「…ご、ごちそうさまです」
後ろにも人が居てどうすることも出来ずその恥ずかしいメモをバイト君に見せる。
彼もびっくりした顔をしながらも苦笑いして通してくれた。顔を赤らめつつ店を出たが
彼の部屋へ行くにはまだ時間は早い。佐伯が店を閉めて戻るのは夜だろうし。
何か本でも買って、いや、映画でも借りて部屋でみながら待つとしよう。