恋のお試し期間
「……彼と愛を育むオーガズムレッスン」
「いやあああ!見ないで!見ないでーーー!」
せっかく観ようと思ったDVDをセットしたのに。
なんでこっそり隠しておいた方を見ちゃうかな。
慌てて彼の手からDVDを取戻し袋に戻す里真。
何時もより早く仕事を終えてくれた彼氏。何か少しでも気遣えたらと掃除しようとしたり
夕飯を準備しようとしたりしたのだが。先手をうたれており部屋は文句なしに綺麗だし
冷蔵庫には「おさわり禁止」の張り紙。
「俺の居ない間に」
「み、……みてない。後でみようと思って」
ここで観ようか迷ったけどやっぱり気が引けて
自分の部屋でこっそり観ようと結論が出た。
「彼とだから一緒に観てもいいんじゃない?」
「やだ。恥ずかしい。…それにこっちのアクション映画みたい」
「…そう。じゃあ。観ようか。こっち」
すでに夕飯の下準備がされており彼は戻るなりてきぱきと仕上げをこなす。
あっという間にテーブルに夕飯が並んで。
その後の映画鑑賞会。
まさか里真の個人的なDVDを発見されるなんて。変な奴と思われたろうか。
ちらっと隣に座る彼氏を見るが彼は特に表情をかえないで里真の肩を抱いた。
「……」
「どうしたの。観たかったんでしょう?これ」
気にしないで映画に集中したいのに。なんでか出来ずにモゾモゾする。
「…だって。あんなの借りちゃって」
「いいんじゃない?興味無いよりは俺はいいと思うけど」
「……じゃ。じゃあ。慶吾さんも借りる?」
「もちろん!ばんばん借りてるよ!…って。言ったほうがいい?」
「ううん。それはそれで困る」
というかこの人がAV観る姿を想像できない。
そんなの見なくても女にもセックスにも困らないだろうし。
里真が借りたのはレクチャーDVDなのでドラマ仕立てのよくあるものとは違う。
以前女子会で彼氏とのえっちを悩んでいると話したら知識としてこういうのも良いと言われた。
今はそれほど悩んではないけれど、好奇心というもので。
R18の暖簾をくぐるのは恥ずかしかったけれどそれが置いてあるのが
入り口の側だったので手にして即効で出てきた。レジも妙な汗をかいた。
「俺は彼女の裸しか興味がない男ですから」
思い出して嫌な汗をかいている里真の頬に軽いキス。
「…うう。こんな女優さんみたいな体ならなあ」
「里真は里真でいいと思うんだけどな。…こんなに柔らかくて甘くて」
「…どうせ私はホットケーキみたいな顔してますよ」
まん丸でふくよかですよ。
里真はちょっと拗ねた顔でテレビ画面に視線を向ける。
鍛えあげられたかっこいいスタイルの女優が果敢に自然と戦っている場面。
自分なら即効で死んでいる。
まず木に登れないし。すぐ息切れでちょっとしか走れないし。
そもそも戦うことなんてないだろうけど。