年下くんの電撃求愛
入社の日の光景が、頭のなかに映し出される。
本河さんは指導者として、俺たち新人に挨拶しに来てくれた。
緊張と期待が、同時に膨らんだ。
俺に気づいたら、本河さんはどんな顔をするのだろう。焦るだろうか。驚くだろうか。何か、言ってくれるだろうか。
そう思うと、自分の方が、どんな顔をしていいのかわからなかった。
「でも……あなたは、なにも知らないみたいに接してきたんです」
『指導者の本河透子です、よろしくお願いします』
気まずさや驚きなどなどいっさいない、ただの後輩に対する笑顔を見て、俺は拍子抜けさせられた。
最初は、もしかして、先輩後輩としてやりにくいから、なかったことにしようとしているのかと思った。
もしくは、まわりに人がいるから、わざと知らないふりをしたのかもしれないと。
でも、そうじゃなかった。
「それから、業務中に偶然2人きりになったときも、あなたは平然としていて。本当になにも意識されていなくて……それで、気づきました。ああ、全く覚えていないんだって」
「……っ、」
「正直……そりゃ、ショックでしたけど、それならそれで仕方がないって、思いました。思うように……していたんです」
理性を飛ばして、酔っていたあいだの出来事なのだ。覚えていない方がきっと仕事はやりやすいし、わざわざ本河さんに、気まずい思いをさせることもない。
俺が彼女に抱いた感情だって、ただ、あまりにもすごい偶然だったから、変に盛り上がってしまっただけの産物かもしれない。
そんな風に、自分の気持ちを否定しようとした。でも。