年下くんの電撃求愛
「出て行ったって、なんでーー」
「増毛ケアにお金かけるの無駄っぽいから、さくっとウィッグにしちゃいましょーって言っただけなんですけどぉ。こっちは親切でアドバイスしてるのに、意味わかんないですよねぇ」
「……っ、」
前山さんの発言に、わたしはがつんと殴られたような衝撃を受け、頭を抱えたくなった。
なんつー失礼な暴言を……!!
お客様は、髪のことで悩んで頑張られているのに、無駄とか、さくっととか。フォローする立場の人間が傷つけてどうするんだ。
と、とりあえず、すぐに謝罪の電話を入れなければ……!!
わたしはあわててマウスを動かし、パソコン画面に顧客情報を表示させようとした。
「前山さん!!帰られたお客様って、吉島さんだよね?……前山さん?」
返事がないので、あせりながら振り返る。
すると、さっきまですぐそこで口をとがらせていた前山さんの姿が、忽然と消えていた。
「あれっ、前山さんは!?」
「ランチって出て行きましたよー」
「ランチ……!?」
その三文字を口にし、わたしはくちびるをわなわなとふるわせた。
お客様との繋がりがいまにも途絶えそうだというのに、なぜ自身の腹を満たすことを優先するのか、前山さん……!!
けれど今は、いなくなった彼女にキレている場合ではない。
と、とりあえず、わたしだけでも先に……
汗をにじませながら、わたしは受話器に手をかける。