年下くんの電撃求愛

「出て行ったって、なんでーー」

「増毛ケアにお金かけるの無駄っぽいから、さくっとウィッグにしちゃいましょーって言っただけなんですけどぉ。こっちは親切でアドバイスしてるのに、意味わかんないですよねぇ」

「……っ、」


前山さんの発言に、わたしはがつんと殴られたような衝撃を受け、頭を抱えたくなった。

なんつー失礼な暴言を……!!

お客様は、髪のことで悩んで頑張られているのに、無駄とか、さくっととか。フォローする立場の人間が傷つけてどうするんだ。

と、とりあえず、すぐに謝罪の電話を入れなければ……!!

わたしはあわててマウスを動かし、パソコン画面に顧客情報を表示させようとした。


「前山さん!!帰られたお客様って、吉島さんだよね?……前山さん?」


返事がないので、あせりながら振り返る。

すると、さっきまですぐそこで口をとがらせていた前山さんの姿が、忽然と消えていた。


「あれっ、前山さんは!?」

「ランチって出て行きましたよー」

「ランチ……!?」


その三文字を口にし、わたしはくちびるをわなわなとふるわせた。

お客様との繋がりがいまにも途絶えそうだというのに、なぜ自身の腹を満たすことを優先するのか、前山さん……!!

けれど今は、いなくなった彼女にキレている場合ではない。

と、とりあえず、わたしだけでも先に……

汗をにじませながら、わたしは受話器に手をかける。

< 27 / 120 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop