年下くんの電撃求愛
今日はわたしが一番の責任者なわけだし、吉島さんは、増毛ケアでずっと通ってくださっている常連さんだ。
ここでご縁を断ち切るわけにはいかない。
記載されている番号に、祈るような気持ちで電話をかける。
たっぷり10コールねばっていると、吉島さんは、やっと電話に出てくださった。
「〜も、もしもしっ!あの、吉島さんのお電話でよろしいでしょうか?ノーブヘアーの本河です……っ!!」
うわずった声で問いかけてみるものの、電話口の向こうは無言だった。
けれど、ものすごく、それはそれはとてつもなく怒っていることが、気配で伝わってくる。
「吉島さん、あの……っ、先ほどは新人が大変失礼な対応をとってしまったようで、本当にーー」
「……なんで電話をかけてくるのが、本河さんなんだ?」
わたしの謝罪をさえぎったのは、ドスの効いた、重低音の声だった。
そこからはもう、怒声のオンパレードだ。
「あ、あのーー」
「〜本人が謝罪するのが筋ってもんだろ!?なんで関係ないやつが電話かけてくんだよ!?あ!?」
「そ、そうですよね。申し訳ありません!!ただ、新人の不手際は指導者であるわたしの責任でして、まずはわたくしの方から……」
「指導者ぁ!?はっ、どうせお前も無駄だとか思ってたんだろ!?」
「えっ」
「指導だかなんだか知らねぇけどなぁ!!日頃そういう会話をしてるから、新人がつい口をすべらせんじゃねえのか!?」