年下くんの電撃求愛
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生きている限り、不変、ということはあり得ない。

人は、つねに変わっていく。

同窓会で、地味だった子があか抜けた美人になっているのが、そのいい例だ。

逆に、さわやかなスポーツマン男子が、金髪デブ男になっていたりという、残念な例もあるのだけれど。

変わらないね〜と言い合う輪の中でも、やっぱり月日を経たことで、それぞれがなにかしら、変化を遂げている。


そう。人は変わっていく。

でも、いったいだれが想像できようか。


チンピラのように怒鳴り散らしていた男性が、ものの十数分で、溶けだしそうな笑みを浮かべる仏に変化する……なんて。



「いやーっ、今後はよろしく頼むよ!鷹野くん!!」


あわただしくビルを出て、死を覚悟しつつタクシーに乗り込んでから、三十分後。

わたしは、目の前で男二人がかたい握手を交わすさまを、呆然とした心境で見つめていた。

男二人、とはもちろん、我が後輩鷹野くんと、お客様である吉島さんのことだ。


「はい、誠心誠意務めさせていただきます」

「いやー、こんな男前に担当してもらえたら、俺も若返るかもしれんな!はっは!!」


吉島さんの愉快そうな笑い声が、わたしの耳に飛び込んでくる。


……信じられない。

わたし自身、聞こえてくるものも、今見ているものも、いまだまったく理解できていないのだけれど……さっきまでのことの運びを説明すると、こうだ。



『本当に、申し訳ございませんでした……!!』


吉島さん宅、到着後。

玄関先でただひたすら頭を下げ、わたしたちはなんとか、吉島さんのお宅に上げてもらえることになった。

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