年下くんの電撃求愛

家の中でも、わたしたちは平謝り。

あぐらをかく吉島さんを前に正座して、すみません、申し訳ありません、本当に申し訳ございません、と繰り返したあと、わたしは車内で頼まれたとおり、担当変更の話を切り出した。

尋常じゃない量の汗をかきながら渡した、発言の主導権。

それを受け取った鷹野くんは、真剣な表情で、吉島さんにこう言った。


『ぜひとも僕に担当させてください。実は、吉島さんには個人的に、強い思い入れがあるんです』


若きイケメンから、突然熱いまなざしでそんなことを言われ、吉島さんはちょっとひるんだ様子だった。

当然、『どういうことだ』と聞いてくる吉島さん。

わたしも、どう説得するつもりかと、すがるような気持ちで、鷹野くんに視線をおくっていた。

そして。


『実は……僕の父親も、ハゲているんです』


鷹野くんは、まさかの、予想斜め上の切り口から、話を始めた。


『自身の家系をさかのぼると、男は代々、全員ハゲています。つまり、僕も将来、高確率でハゲます』


………突拍子もないカミングアウトだった。

わたしは焦った。心底焦った。

どうした鷹野くん。吉島さんの前でハゲとか、気が狂ったか鷹野くん。

ところが、わたしの心配をよそに、そこからの彼は雄弁だった。


『今から将来のことが気がかりで、毎日、頭皮マッサージを行っています』


そのように続け、切なげに目を伏せた鷹野くんは、次々と自身の悩みを打ち明けていった。

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