年下くんの電撃求愛
指の腹で円を描くように、丁寧にシャンプーし、なおかつそのシャンプーは無添加ものを取り寄せているということ。
頭皮を傷めるのがこわくて、学生時代、一度もカラーに挑戦できなかったこと。
規則正しい生活に、食事にまで気をつけていること。
テレビでハゲ芸人がいじられていると、見ているのがきつくてチャンネルを変えること。
時間もお金も労力もかかるし、とにかくもう疲弊しているということ。
あんぐりと口を開いてかたまるわたしと吉島さんを前に、鷹野くんはすらすらとよどみなく、辛い現状を並べ立てていった。そして。
『他人はかっこいいハゲになればいいじゃんとか、ウィッグつければ?とか簡単に言いますけど……そうじゃないですよね』
鷹野くんは艶っぽいため息をはき、憂いをおびた表情を見せて、そう言った。
『勧める立場の人間が言うのもなんですが、やっぱりウィッグには多少抵抗があるんです。なんとかできるものなら、自分の髪でなんとかしたいんですよねーー吉島さん』
そう、力強く吉島さんの名前を呼んだかと思うと、自身の鞄をすばやく開き、いつの間に持ち出したのか、一冊のファイルを取り出した。
それは、吉島さんの、今までの経過をまとめたファイルだった。
『今まで頑張ってケアを続けてこられて、実際、本数が増えています。それからこの数値……頭皮の柔らかさをあらわしているんですが、最初に比べてずいぶん変わってる。放っておけばどんどん硬くなってしまうところを、維持どころか向上しているというのは、素晴らしいことなんです。今後も変化していく可能性は、大いに考えられます』