年下くんの電撃求愛
「いえ。お役に立てたなら良かったです」
鷹野くんはそう簡潔に答えると、柔和に笑った。
間近に見える笑顔にどきりとして、わたしはくちびるを結び、落ち着きなく目を伏せる。
な、なんか。今になって、緊張してきたんですけど……。
行きしなと、同じ。タクシーの後部座席。わたしが左、鷹野くんが右。
わたしたちの間にある距離は、きっとまったく同じなのに、急にわたしのなかに、そわそわとおさまりようのない感情が芽生えてしまった。
「あ、ええっと……鷹野くんも、髪のことで悩んでたんだね……!!」
どきどきしているのを誤魔化すように、わたしは髪を撫でつけながら、なんとか話題を引っ張りだす。
「えと、もしかして、ノーブヘアーに就職したのって、そういういきさつなのかな!?……あっ、もちろん今日聞いたことは、ほかの社員に言ったりしないからーー」
「ああ、あれ、ウソです」
あっさりとした口調で返ってきた言葉に、わたしは一瞬かたまり、そしてゆっくりと、首だけを動かした。
「……はい?」
「父も祖父も髪はあります。フサフサです」
ウソも方便ってやつです。
そう言って、にっこり、左右均等に口端を上げる鷹野くん。
わたしはほおを引きつらせてから、はあーっと、盛大なため息をはいた。
「……鷹野くんてさ」
「はい?」
「なんか、絶対敵に回したくないタイプだよね」
「お褒めの言葉として受け取っておきます」
ふ、と鷹野くんが笑い、つられるように、わたしも笑う。
数十分前とは真反対の、おだやかな空気が、車内に生まれていた。