年下くんの電撃求愛
とてもじゃないけれど、クリームの舌触りが素晴らしいとか、エビの弾けるような食感がたまらないだとか、ブロッコリーの茹で具合が神だとか、そんな食レポにいそしめる余裕は、わたしにはなかった。
社外に出た方が、きっと話がしやすい。
そう思っていたけれど、実際はよけいにタイミングがつかめないし、逆に人の目が、ものすごく気になる。
頭に、首に、腕に、背中。
さっきからちくちくと刺さる感じがするのは、店内に点在する、女性の皆々様の視線だろうか。
ふだん人様からの視線攻撃を受ける機会が皆無なわたしは、周囲のそれを、じつに敏感に感じ取ってしまう。
それと同時に、あらためて気づく。
鷹野くんて、やっぱり、誰彼の目を引く人間なんだなぁ……と。
そろ、と正面に視線を投げる。
視界に入る、ネイビーのスーツと、落ち着いた同系色のネクタイ。
それらはたぶん一般的なものなのに、鷹野くんが着ていると、最高級クラスの逸品に見えるから不思議だ。
そして、そのスーツが覆っているのは、本当に日本人ですか嘘でしょう嘘だと言いなさいよ、と詰めよりたくなるほど、非の打ちどころがない抜群のスタイル。
顔面は言わずもがな、一パーツずつ最上級のものを選び取って作られたかのようだし……食べ始めたころから気づいていたけれど、鷹野くんは、フォークの扱いすらとてもきれいだ。
イケメンってもともと、マナーとか、美しい振る舞いとか、そういう機能が備わっているのだろうか。
そんなばかみたいなことを、考えてしまう。