年下くんの電撃求愛
「本河さん」
「へっ!?」
鷹野くんの呼びかけに、はっと我にかえる。
思いっきり不躾にガン見してしまっていたことに、そのとき気づいた。
「こっち向いてくれてるのは嬉しいんですけど、そんなに見られると、穴が開きます」
「あ、穴……そうだよね、開くよね、ごめん……」
「ふっ」
しどろもどろになって謝ると、鷹野くんは楽しそうに破顔した。
笑みをくちびるに残したまま、お皿の隅で、余りなくきれいにジェノベーゼのパスタを巻きとる。
そして、「本河さん」とやわらかく、わたしの名前を呼んだ。
「な、なに?」
「そういや俺、重要なことを聞いていませんでした」
「……重要なこと?」
「はい。本河さんて、どういう男性が好みなんですか」
「え……えっ!?なんで!?」
「作戦を立てたいので、参考に是非」
「さく……!?」
さらりと髪を揺らし、同じくさらりと、強烈な台詞を放ってきた鷹野くん。
くちびるの端を数回引きつらせながら、わたしはなんとか、当たり障りのない答えを口にする。
「えー……や、優しい人、かな?」
「そうですか、頑張ります」
……頑張らないでください恐ろしいから。
わたしがよっぽど複雑そうな顔をしていたのか、鷹野くんは、ぷ、と吹き出して笑った。
鷹野くんて、こんな風にも笑うんだ。
作られたものじゃない、素の笑顔を目にして、すこしだけ緊張がほぐれていく。
「……あ」
「はい?」
「そうだ。鷹野くんて、元美容師だったって本当?」