年下くんの電撃求愛
少しも動けず、なにも考えられずにいるわたしの頭上で、鷹野くんの、明瞭な声がひびく。
「は……?」
鷹野くんの言葉は、どうやら達彦に向けられたもののようだった。
正面に位置する達彦は、威嚇するような、しきれていないような、微妙な表情を浮かべている。
「僕、前から透子さんのことが好きで。ずっと口説いていたんです、彼氏と別れて、付き合ってほしいって」
わたしを腕中に囲ったまま、鷹野くんは、そう流暢に語り出す。
「でも、彼氏がかわいそうで別れきらないって、透子さん、なかなか了承してくれなくって。透子さんは、優しいから。優しくて、誠実だから。あなたのことなんてとっくに好きじゃなかったのに、あなたに付き合ってあげてたんです」
「は……」
「あなたが飽きるまでって。……知らなかったでしょう?」
くすり。余裕を漂わせた笑みが、鷹野くんのくちびるからこぼれる。
「……で、あなたがやっと手放してくれたんで、晴れて付き合うことになりました、僕たち。本当に感謝してます。透子さんの可愛さに気づかずに、簡単に放したどっかのクズには。……ああ、あと」
わたしをさらにぎゅっと強く引き寄せて、鷹野くんは、達彦たちに言い放った。
「……あなた方、すごくお似合いだと思います。せいぜい、お幸せに」
丁寧語なのに、聞いている側にものすごく圧力を感じさせる口調だった。
鷹野くんの顔にどんな類の表情が浮かんでいるかは、見えなくても想像できる。