年下くんの電撃求愛
触れて梳いた、あの瞬間の感触が、ずっと指先に残っていた。
長年、ロングヘアーなのだろうか。
ロングが似合っていないわけではないけれど、短くしたりはしないのだろうか。
ボブや前下がりのショートにしたら、きっとずっとあか抜けて、あの人はもっと、可愛くなると思うのに。
もう一度あの髪に触れてみたい、と思った。
今度は余裕をもった状態で、丁寧に洗い、ゆすぎ……そして自分が、ハサミを入れることができたなら。
その後資格を取得し、実家の美容室でアシスタントとして働き出してからも、もしかしたら彼女が来店する可能性があるかもしれない、なんて気持ちがどこかにあった。
そんな奇跡的な偶然が、あり得るはずがないのに。
忘れられないのは、実習中の出来事が、すごく印象的だったから。
弱い立場だったところを助けられたから。勝手に美化しているだけだ。もう会えるわけがない。
どんな風に言い聞かせても、どうしても頭の隅から、彼女の存在が消えることはなかった。
当然、彼女の髪に触れる機会はないまま、2年の月日が過ぎた。
その間にいろいろと考えさせられることがあり、俺は転職を決め、実家の美容室から離れることになった。
たくさん悩んだ末の決心だったので、後悔はしていなかった。
けれど、これでもう確実に、二度とあの人の髪に触れることはないのだと思うと、それだけを少し寂しく思った。
……だから。