年下くんの電撃求愛
店を出てすぐのところに、空車のタクシーは停車していた。
『江田町の、エースマンションまで』
支店長に言われたとおりタクシーの運転手に告げると、20分もしないうちに、一棟のマンション下に着いていた。
そんな短い間に本河さんが回復できているはずもなく、俺は彼女を両手に抱え、タクシーを降りた。
『だいじょーぶ、歩けます〜』
『動かないでください、落ちますよ』
若干ろれつが回っているか怪しい本河さんは、俺の腕のなかで、ふにゃふにゃと面白い動きをした。
覚醒の方も怪しかったが、なんとかうつらうつら会話出来る程度で、部屋番を聞き出すことと、ポケットからカギを受け取ることはできた。
開錠し、玄関に入る。
部屋にまで入っていいものか躊躇したけれど、本河さんは歩ける状態ではないし、玄関に放っておくわけにはいかない。
俺は一応『お邪魔します』と告げ、本河さんを抱えたまま、奥にあるリビングへと進ませてもらった。
壁を手探り、電気をつける。とたん、ベージュを基調としたワンルームがお目見えする。
部屋の右端に据え置かれたベッドを確認すると、俺はその上に、そっと本河さんを下ろした。
『ん……』
起きているか寝ているかの瀬戸際みたいな本河さんは、もごもご何かを言うと、ベッドの布団のなかに、自らおさまっていく。
そんな本河さんの様子を見て、俺はほっと、息をついた。
そして、思った。
……本当に、驚きばかりの数時間だった。
今自分がどこにいるのか。何を見ていて、何が起こっているのか。
それらを改めて自覚していくと、夢じゃないんだろうかという、懸念すらよぎる。